こんにちは!三木楽器ピアノアトリエのMTです。
今回は、現在三木楽器開成館の店頭にて展示・販売している
フランスの名門ピアノメーカー PLEYEL(プレイエル) のグランドピアノをご紹介いたします。
プレイエルとは…
PLEYELは、ショパンが愛用したことでも知られるフランスの老舗ピアノメーカー。
繊細で表現力豊か、そしてどこか詩的な音色が特徴です。
今回ご紹介するグランドピアノは、PLEYELの中でも特にシンプルで落ち着いた品格を感じさせるモデル。
美しい木目と深みのある色合い、白鍵には象牙、黒鍵には天然木の黒檀を使用し、脚部の装飾や大屋根突き上げ棒の一部には真鍮が用いられるなど、細部まで上質なつくりが感じられます。
また、ルノワールの名画『ピアノに寄る少女たち』に描かれたピアノは、PLEYELではないかとも言われています(※一説)。そんな歴史にも思いをはせながら、このピアノの再生作業を振り返りながらご紹介していきます。
まずは状態の確認から
整備前の状態は、決して良いとは言えませんでした。塗装のひび割れ、化粧板の剥がれ、ペダルや蝶番の錆び。大屋根を外すと、弦やチューニングピンの錆びも進行しており、さらに響板には割れも確認されました。このままでは、本来の響きを十分に発揮できない状態。確認を進める中で「大掛かりな修理になる!」と直感しました。


外装修理を開始
まず取り掛かったのは、本体・屋根・鍵盤蓋の塗装剥離作業です。大きなパーツが多く、ひたすら剥がす作業が続きます💦
この工程だけでも数日を要しました。平滑さを保ちながら分厚い塗装を削り落とす作業は、根気と忍耐が問われる工程。


塗装を剥がし終えると綺麗な化粧板が現れ、ようやく再塗装の開始です。その後、何段階にも分けて塗装を行い本来の美しい色合いを取り戻しています。



響板修理― 内側の仕事こそ重要
錆びた弦やチューニングピン・金色のフレーム部分を取り外すし、響板の状態をしっかり確認します。
響板にも塗装が施されているため、ここでも再び塗装剥離作業からスタート💦
剥離後、割れを丁寧に止め、新たに塗装を施します。この工程は音色にも影響するため、特に慎重に進めました。




弦張り―音の骨格づくり
外装修理と響板修理が完了し、いよいよ弦張り作業へ― !
チューニングピンを一本ずつ打ち込み、全体の張力バランスを考えながら弦を張っていきます。
グランドピアノは総張力が非常に大きいため、わずかな狂いが音色や耐久性に影響する。それを踏まえつつ地道に進めていきます。PLEYEL特有の響きを損なわないよう、オリジナルの設計や時代背景を意識しながらの緊張感のある地道な作業です。


象牙鍵盤の漂白
長い年月を経た象牙鍵盤は、黄ばみや色ムラが出てきます。今回はできる限り素材を傷めない方法で時間をかけて丁寧に漂白を行いました。自然でやわらかな象牙本来の表情に仕上がりました。

整調・調律―仕上げの工程
最後は、弾き心地と音色を決定づける整調・調律・整音作業です。三木楽器ピアノアトリエでは、ここから音作りのプロフェッショナルに引き継ぎます。鍵盤の深さや重さ、アクション働きをすべてを調整し演奏者が自然に表現できるタッチを作り上げます。その後、張りたての弦を落ち着かせるために何度も調律を重ねPLEYELらしい繊細で歌うような音色を引き出しています。
最後に―店頭展示・ご試弾について
今回ご紹介させていただいたPLEYELグランドピアノP170は、現在は下記の店頭にてご試弾いただけます。文章では伝えきれない木目・音色・タッチは、ぜひ実際に見て触れてご体感くださいませ。

