あるときは電音技術者、そして普段はピアノ調律師でもあるYKです。
今回は、ピアノ修理についてご紹介します。
ついつい話が逸れだしては長くなりがちな私ですが、今回は脱線せずに終わることが出来るのでしょうか…?
弾くと“カシャカシャ”と音が鳴る?
毎年調律にお伺いしているお客様宅で、作業前に『気になられていることはありませんか?』とお尋ねすると、『そういえば、弾いていると“カシャカシャ”鳴っている音がありました!』とのことでしたので、調律前にチェック。
順番に打鍵してゆくと、確かに、打鍵時に“カシャッ”となる音があります。
何度か繰り返し弾いてみて、“カシャッ”という異音が発生している音がどこなのか?を、確認します。
音の場所が分かれば、次に異音が発生している部品の特定です。
鍵盤を押さえてから音が鳴るまでに動作するパーツは80種類ほどになりますが、そのうちの “どの部分・部品”で異音が発生しているのか?” 各部の動作を切り分けながら、確認してゆきます。
鍵盤だけ動作させた際にどうか?
逆に鍵盤以外を動作させた際は?
など、範囲を限って確認することでより分かりやすくなります。
どんな動作の時に異音が鳴るのか?
部品の特定ができれば、次は異音が発生する動作の確認です。
これは部品の特定と同時に行うこともしばしばですが、例えば『強く弾いた際に』 『鍵盤を離した直後に一瞬だけ』 など、特定の動作でのみ異音が発生することもあります。
今回、異音が発生していた部品はこちら。


左写真の長方形(白)の部分は【ウイペン】、長方形(黄緑)の部分は【ウイペンフレンジ】という部品になります。
この二つの部品は【センターピン】(右写真:黄色丸の部分)という金属部品でつながっており、鍵盤からの入力に応じて回転運動を行います。
フレンジにセンターピンが挿さる孔の周囲には、【フレンジブッシングクロス】という赤いクロスが貼られており、雑音防止や適切なトルクを生み出す役割を担っています。
この部分は、ゆるすぎてもダメ、もちろん固すぎてもダメ。
ピアノには絶妙なバランスで成り立っている部分が、多くあります。
今回は、このセンターピンとフレンジブッシングクロス間に “ゆるみ” があり、わずかにガタツキがみられました。
打鍵時に起こる振動により、そのわずかなガタツキの部分で“カシャッ”という異音が発生している状況です。
修理するには何をどうする?
ゆるみが発生する理由は、クロスの摩耗であったり過乾燥であったり様々ですが、古いセンターピンを抜いて分解し、ひと回り太いセンターピンへと交換することで、ゆるみが改善されます。

ただし、センターピンを太いものに交換するだけでは適正なトルクにはならないので、リーマーを使用してクロスの厚みも調整することで、トルクが適正なものとなります。
交換・調整後にトルクをチェックし、アクションに取付後に動作のチェック、異音が発生していなければ、修理完了です。
絶妙なバランス
先ほどの、『ゆるすぎても、固すぎてもダメ』というお話。
何事も度が過ぎればデメリットがあるのは当然ですが、それはピアノに於いても同じです。
今回修理したセンターピン周辺の動作不良は、ハンマーやジャックでもよく起こります。
『固すぎる』場合、回転運動がスムーズに行われないため、ひどい場合にはハンマーが動かない、タッチがものすごく重い…など、比較的分かりやすい症状が出ます。
その結果、音が鳴りにくい、弾きにくいという症状・印象となります。
その逆で『ゆるすぎる』場合、何かが動かないという症状にはあまりならないので、ゆるすぎることが分かりにくことも多いです。
しかし、物に力を伝えるためにはある程度のトルクも必要です。
ゆるすぎる場合には適正なトルクが得られず、その部分で力をロスしてしまうことになります。
ロスしてしまう力が大きくなればなるほどに、演奏者が音をコントロールしづらくなり、そして出せる音の幅も狭くなることが多いです。
さらには、今回ご紹介した修理症状のように、ゆるすぎるためにガタツキや雑音が発生してしまうこともあります。
ですので『ゆるすぎる』ことも、ピアノにとっては大きな影響があるものです。
固すぎず、ゆるすぎず。
絶妙なバランスが求められる。
ピアノも奥が深い楽器です。
症状の実例
上記の様子は一例ですが、ピアノ内部にはこのような回転部分が複数箇所あります。
また、鍵盤の高さ、下がる量、動作範囲などは0.1mm単位の調整を行いますので、各所それぞれに細かな調整を必要とし、それらのが絶妙なバランスの上で成り立つことで、ピアノの繊細な演奏性や表現力が実現されています。
しかしながら、木材・金属・フェルトなどは、温度・湿度の変化にも敏感に反応し、状態が変化し、バランスが徐々に崩れていってしまいます。

ですので、音律や演奏性の維持のために、ピアノ調律・調整という作業はとても重要なんですね。
ピアノを楽しむためにこそ
今回の症状について、正常な状態と不良な状態、寸法で言えばおそらく0.1mm単位~もっと細かな違いになります。
数字にしてしまえば、『それだけ?!』と感じられるかもしれません。
しかし、ピアノにとってはその0.1mmほどの違いによる影響は大きく、年月が経てば経つほどにその変化が積もり積もって、ピアノ本来の力を発揮できなくなってゆきます。
ただ、その変化は日々少しずつですので、明確な違和感とはなりにくい側面もあります。
ピアノが性能を発揮しきれないということは、本来ならば感じられるはずのピアノの繊細さや演奏の面白さも、失われつつあると言っても過言ではありません。
ピアノをもっと楽しんでいただくためにも、定期的な調律はかかせません。
ピアノに向かっていただくその時間を、より良いものに出来るように!
それがピアノ調律師に共通する想いでもあります。
ピアノの面白さ、素晴らしさをお伝えするのも、ピアノ調律師の役目。
今回は珍しく脱線なく!
真面目にピアノのお話でした。
気になることは、ぜひご相談を!
ピアノについて気になること、弾きにくいなどの症状がございましたら、ぜひお三木楽器ピアノアトリエまで、お気軽にご連絡ください。
お電話でのご説明や出張下見など、ご希望にあわせた形でお話・ご案内させていただきます。
出張下見も有料にて承ります (¥3,300税込~)
※地域・作業内容により料金は変化いたします
それでは、本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
