こんにちは♪三木楽器ピアノアトリエのMTです。
「ただものではない!」とっても希少なピアノのご紹介です。まるで大きなパワーストーンのように繊細で美しい外観には、誰もが目を奪われるのではないでしょうか!! 長年、多くのピアノ再生に携わってきましたが、一生お目にかかることがなかったかもしれないような特別な1台です。光の当たり方で表情を変える木目と、奥行きのある色合いは神秘的でいつまでも眺めていたくなります。
そのピアノはスタインウェイ【クラウンジュエルシリーズ】の前身ともいえる特別モデルのグランドピアノです。
空間の格を上げるスタインウェイ❝特別モデル❞がアトリエへ!
今回、三木楽器ピアノアトリエへ入庫したグランドピアノは市場に出ること自体が少なく、修理や再生現場でもめったに出会うことのできないモデルのひとつです。
このピアノを目の当たりにした瞬間、通常の木目ピアノとは明らかに違うオーラに感動しました。イタリアの高級家具ブランドとして有名なサルタレッリ(SALTRELLI MOBILI)の食器棚・飾り棚・ドレッサーや、ベースブランドのFODERAや高級ギター(エキゾチックウッド)を連想される方もいらっしゃるのではないでしょうか⁈
選び抜かれた素材で化粧板の表情は1台ごとに異なる『世界にたった1台の存在』なんだそうです。外装に使用される木目の流れ・左右対称性・導管の揃い方・色調の深さなどが本当に見事で、芸術作品のようです!!!!

作業前の状態は⁇
内部のチューニングピンや弦には多少の錆び・くすみはあるが問題なし!アクションも消耗が少なく良好!外装も目立った汚れや傷・金属パーツの錆びはほとんど見られず、状態は良好だと思われたのですが…複数箇所に化粧板の浮きや部分的な剥がれが確認されました。このような化粧板の剥がれはそれほど珍しいわけではなく、過去に整備したPLEYEL(プレイエル)・Orgast Holster(オーガストフォルスター)・PETROF(ペトロフ)などでも同様の症状がみられました。 また、白鍵には象牙が使われているのですが、象牙鍵盤特有の黄ばみが少々見られました。象牙(白鍵)漂白については、また改めてご紹介させていただこうと思っています!



化粧板の剥がれ修復方法の選択
化粧板の浮きと剥がれの症状が見られたのはペダル柱・脚柱・ピアノの裏側、そして「前框(まえかまち)」と「棚板(たないた)」と呼ばれるピアノを弾く際に、演奏者が向かい合う部分です。鍵盤部を挟むようにある上下の板なのですが‥この部分の化粧板が下側から少し剥がれていました。通常のピアノでは、このような場合、化粧板を貼り替える事もありますが、この希少モデルでは、唯一無二の美しい化粧板を貼り替えるなんて選択肢はありません。そこで、オリジナルの化粧板を生かし接着修復する方法を選びました。
ピアノを裏返す??―苦労した工程
特に苦労したのがピアノを裏返して接着する工程。グランドピアノを反転させた光景は決して日常的ではありません。



常に重量・重心を考慮しつつ、別のトラブルを招くことのないよう慎重に進めなければなりません。養生作業や接着剤を流し込むための下準備を含め、地面に這いつくばっての厳しい態勢。そんな動作が制限される作業は何かと苦労の連続でしたが、こうして裏返したおかげで、裏側のペダル取り付け部分・支柱・響板などの状態確認を通常よりじっくり行えるといった利点も!また剥離部分をしっかり確認でき接着剤の流し込みや万力での圧着もスムーズとなりました。結果としてオリジナルの化粧板を痛めることなく安定した接着が完了してホッとひと息です。
まとめ
化粧板の不具合を含め、外装の整備はようやくゴールが近付いてきました。このような希少なピアノは、修復する私たちにも高い判断力と技術力が求められると思っています。オリジナルの繊細な木目・風合い・質感を保ちつつ輝かせる事を最優先に、昨年末から年を越して急がず丁寧に進めております。この魅力的なピアノが三木楽器開成館でお披露目される日を楽しみに、もう一息頑張って向き合ってまいります。

