【スタインウェイ希少モデル】ついに完成!

こんにちは!三木楽器ピアノアトリエのMTです。

半年ほど前の記事では、このピアノについて、外装の状態や傷修理・再生工程の様子をご紹介させていただきました。
❝スタインウェイ/ウォルナット❞特別モデルが放つ唯一無二の存在感!
今回はいよいよ‼ 最終調整を終え完成した姿までをお届けします。
昨年末から[MIKIGAKKI PIANO ATELIER]で修理を続けてきた超希少な【STEINWEY&SONS】O型(180cm)、ウォルナット瘤材の美しすぎる木目が特徴のグランドピアノです。
くすみや黒ずみが気になるフレーム・全体的に黄ばんだ象牙鍵盤がどこまで蘇るのか⁇グランドピアノの「音づくり」はどのように行われてるのか⁇ ぜひぜひ最後までご覧くださいませ。

フレーム金粉部分塗装
 ーオリジナルを尊重し必要な部分だけを補修ー

グランドピアノの屋根を開けると、弦やピンを支える金色の鉄骨があります。それがフレームと呼ばれている部分です。

フレームについて

材質は鋳鉄。これに金粉と透明塗料を配合した塗装が施されている。ピアノのフレーム塗装に使用される金色の塗料は、見た目は豪華ですが「純金」ではなくアルミニウム粉末や真鍮(銅+亜鉛)が主な成分とされている。また、ピアノの弦は1本あたり約80~100㎏、全体では約20トンにも達する弦の張力を支え、音程の安定を保つため、防錆・耐久性を重視した工業用の耐久塗料となっている。

さて!整備前はフレームの随所にくすみ・黒ずみ・変色が目立つ状態。これらを必要以上に手を加えず、気になる部分だけに金粉塗装を施す事にしました。これもなかなか難しい作業‥
金粉と言ってもいろんな種類があるんです。例えばヤマハピアノもカワイピアノもフレームの金色の種類は数種類あり同メーカーでも同じ金色ではありません。
今回ご紹介のスタインウェイには、ドイツから取り寄せた金粉を使用しましたが「スタインウェイの金粉といえばこれだ!」とそう簡単にはいきません。さらにこのピアノに限らず、フレームにも経年での色の変化が加わるのですから大変‼
周囲との境界が不自然にならないよう馴染ませる吹き付け作業にも、高度な技術が求められます。
‥金粉でお化粧を施し色合わせもバッチリ‼ とてもきれいな仕上がりに!

before
after
       before
       after

象牙鍵盤の漂白
ー黄ばみは蘇るのか?象牙本来の白さへー


象牙鍵盤はアコースティックピアノの中でも特に繊細な素材です。ピアノの象牙鍵盤は昔の高級ピアノに使われた伝統的な素材で、見た目・手触り・演奏感に独特な特徴があります。

象牙について

象牙は適度な硬さと柔軟性をもっており、非常に細かい彫刻や細工が可能です。古くから印鑑や和楽器の部品、高級工芸品の素材として重宝されてきました。現在はワシントン条約により国際取引が厳しく制限されており、非常に希少価値の高い素材となっています

このピアノの白鍵は象牙鍵盤・黒鍵は黒檀を備えた仕様。当たり前のように経年変化で黄ばみがありました。個人的には、この黄ばみ感も風合いがあって良いものだなと思いますが‥今回はとても魅力的な外装に合わせて象牙の黄ばみもすっきり漂白。
象牙鍵盤は、現代の樹脂素材(アクリル・アクリペット鍵盤など)や人工素材(人工象牙=ニューアイボリー・アイボライト・ファインアイボリーなど)とは異なり吸湿性と独特の触感を持っています。
この独特な質感を損なわないように専用の薬品で漂白作業を施し、本来のしっとりした白さと手触りが蘇りました。丁寧に時間を費やしたおかげで新品のような清潔感を保ちつつ、象牙ならではの風合いも残すことができました。
見た目も手触りも最高の仕上がりとなっています!
極めて入手困難となった、天然象牙鍵盤ならではの贅沢な手触りと弾き心地。独特の質感・触れた瞬間に指先に吸い付くような滑らかさを、ぜひ皆さまに感じて頂きたいです!

        漂白前の象牙鍵盤
         漂白後の象牙鍵盤

全弦張り替え
ー約230本の弦すべてを手作業で向き合う ー

昨年末から長期に渡って整備を行い、いったん4月初旬にようやく完成‼となっておりましたが、巻線・芯線ともに、ほんの少し変色がみられ…。せっかく、アクション調整や音づくりを数日かけて丁寧に行いましたが全弦張り替えることを決意。ここからの作業はスタインウェイやベーゼンドルファーなどの舶来モデルにとっても詳しい、調律師KIにバトンタッチです。

弦の張力を考えながらバランス良く全ての弦を外し…新しい弦を張っていく。彼の、段取りと手際の良さにはいつも感心しております。丁寧かつ精密で、とてもリズミカル。オーバーホールの際も、いつもリズムよく進めていますよ。
外観の美しい木目に、新しく張り替えられた弦の煌めきが加わり、さらに高級感を感じて頂けるのではないでしょうか!

アクション整調
ー整調作業で演奏性の再構築ー

中古ピアノではアクションの調整整備が演奏性を大きく左右します。鍵盤のタッチ・反応・音の立ち上がりなどなど…鍵盤の高さや鍵盤を弾いた時の沈み込みの深さを均一に揃え、ハンマーやダンパーなどのアクションすべての状態を確認!演奏した際にスタインウェイらしい反応の良さと、繊細なコントロールが可能なタッチに調整していきます。

調律
ー音のものさしを正しく揃えるー

アクション調整が整ったあとは、音づくりの土台となる重要な調律です。調律を一言で表すと『音の基礎工事』といった感じでしょうか。約230本もあるチューニングピンを1本ずつ調整。具体的にはチューニングピンに調律用の工具を差し込み音を正しい高さに合わせていきます。今回、全弦交換を実施したので、弦を落ち着かせるために、調律は数日かけて行いました。
すべての弦の張力をコントロールし❝スタインウェイらしい音色❞のイメージを膨らませながら進めていきます。調律師K・Iは大屋根と響板の中心、「空間に音が見える」と言います。ピアノを演奏されいて、この表現「わかるわ~!」と共感される方もたくさんいらっしゃると思います。彼の描き出した音色を、ぜひ確かめていただきたいです。

KI
KI

私は空間に音が見えるんです!

整音
ー音色が語りはじめる仕上げのひとときー

調律を終え、すべての音が正しく並んだだけでは、まだ完成したとは言えません。調律で整った音程という土台の上にどのような「彩」を添えていくか‥ここからが最も大切にしている最終段階の整音『音をつくる』工程。ただ、音程が合っているだけの音から、「心に響く音色」に変化させていく、とても繊細な作業。 整音作業はピッカー(針)といわれる工具を使用し、そのピッカーでハンマーを刺したりヤスリで削ったり‥ハンマーフェルトの状態を変化させながら音色を整える。調律師は「あと一針入れるべきか、ここで止めるべきか」という微妙な判断に神経を集中させこの整音作業に没頭しておりました。

最後に・・・

長期にわたり整備を進めてきた希少モデル【STEINWAY&SONS】のグランドピアノがついに完成いたしました! 
外装・象牙漂白・全弦交換、そしてミリ単位の内部調整まですべての工程を終え、自信をもって送り出せる最高の仕上がりです。
ウォルナットの色味と、このモデルならではの美しい木目は、本当に大きな宝石のようで見惚れます。また、この極上の響きには心打たれるものがあります。「世界にたった1台の希少モデルピアノ!」三木楽器開成館の店頭で皆さまにお披露目される日をスタッフ一同楽しみにしております。