音がいくつか鳴らない|下鍵盤修理【エレクトーン ELS-02C】

電音技術者YKです。

今回は、下鍵盤に押さえても音が鳴らない鍵盤があり…とのことで、修理に伺った際のお話です。

修理のお話の前に【新機種紹介】


まずは2026年2月に発売されました、ヤマハ エレクトーン新機種についてご紹介いたします。

いきなりの脱線ではありますが…苦笑

ELS-02シリーズが発売されたのは2014年4月でした。

あれから12年、待望の新機種が発売されました!

ひとまず動画でご紹介です。

ヤマハ エレクトーンSTAGEA ELS-03シリーズ

外観も大きく変わり、めっちゃカッコイイですね!

お部屋に置いていただくものなので、やっぱりデザインは大切です。

そしてもちろん、変わったのはデザインだけではありません。

ELS-03シリーズ上級機種(クラスX)には新開発の鍵盤が搭載され、ポリアフタータッチによるより細やかでハイレベルな表現が可能となりました。

ポリアフタータッチとは?(クラスXのみ搭載)

新開発のFSX-i鍵盤は、1鍵ごとに圧力を検知するため、複数の鍵盤を押している際にも、それぞれの指が押し込む力の強弱に応じて、アフタータッチの効果を指(鍵盤)単位でコントロールできます。

たとえばギター演奏でコードを押さえながらメロディーにだけビブラートをかけたり、弦楽合奏のニュアンスを繊細に表現したり、和音の中の音の強さを自由に変化させて幻想的でやわらかなシンセサウンドを表現したり…。アコースティック楽器のリアルな音色の追求に留まらず、演奏者の細やかな感性をより豊かに反映することができます。

※ヤマハホームページより引用

もちろんその他にも色々なところが進化しています。

表現力が更に磨かれたエレクトーン新機種!弾いてみたくなりますよね~!

ELS-03シリーズについて、詳しくはこちら⇒

そして修理のお話です


早速脱線してしまいましたが、修理のお話に戻ります。

今回、最初にご指摘をいただいた症状は “下鍵盤のソが鳴らない” というものでした。

確かに“ソ”の音が鳴りません

他の音も続けてチェックすると…。

なんと、鳴らない音が全部で7鍵

しかも、鳴らない鍵盤の多くが分散している。

これはさすがに予想外の状況でした。

これまでにも、『エレクトーン足鍵盤で音が鳴りにくい』『電子ピアノで一つ音が鳴らない』という症状の修理についてご紹介してきましたが、どちらの場合も症状としては “一音だけ” 鳴りにくい・鳴らないというものでした。

でも今回は、少し様子が違いますね。

さて、原因はどこにあるのでしょうか。

(参考)過去ブログ

分解してみましょう


まずは上部のパネルを開けます。

鍵盤、LCD、スイッチ類や電源用の束線が収められていますので、分解に支障が出るものだけを外して行きます。

沢山の束線たち

次に、鍵盤ユニットの取り外しに進みます。

上下からネジで取付されていますが、一部のネジは上部ユニットを持ち上げてから取り外す必要があります。

持ち上げる ⇒ 専用ステーで支えられた状態の上部ユニット

この上部ユニットがなかなか重たくてですね…。

年々重さたが増している…ワケないんですが、こういう時に体の衰えを感じます。

情けないことですが…。

電子楽器は分解の際に楽器背面のネジを外す場合が多く、まず楽器を移動させてから~ということも多いです。

分解の途中に上下逆さまにしたり、重たいユニットを抱えて床に置いたりということもあり、これがなかなかの力仕事。

こういう場面に遭遇すると、やっぱり体を鍛えておくことも大切ですよね…と痛感します。

そうなんです、大切なんです。

でも、体を鍛えるのって本当に辛い…。

ジムに通ったりランニングしたりを継続できる方々って、本当に凄いです、尊敬の念でいっぱいです。

私も昔、それはそれはスパルタな陸上部におりまして、辛く苦しい練習の毎日ではあったんですけども…。

最近はトレーニングやランニングよりも、ゆっくり音楽を聴いたり、家でゴロゴロしがちです。苦笑

アカンなあ~と思いつつ(結局思うだけ)、引き続きエレクトーンの分解を進めます。

上部ユニットをこのように持ち上げた状態で、ようやく上鍵盤ユニット裏側のネジを外すことができます。

そして、上鍵盤ユニットを取り外してからでないと下鍵盤ユニットも取り外せない構造になっているため、ここまでの分解にもなかなか時間が必要です。

取り外した上下鍵盤の様子が、下の写真です。

症状の確認について


さて、今回の症状は当初の “下鍵盤のソが鳴らない”だけでなく、実際には“下鍵盤の7鍵で音が鳴らない”というものでした。

このように、ご訪問前に伺っていた症状と、実際に確認できた症状に違いがあることは、珍しいことではありません。

今よく弾いている曲で使う音に異常があると、“故障している!”と気づきやすいですが、使わない音で故障が発生していても気づきにくいものです。

なので実機をチェックしてみると、今回のように『他にも出ない音』を発見することもしばしば。

また、例えば『音が出ない』というご指摘あったとしても、『どのような状況なのか?』が分からない場合、

①特定の鍵盤が動かなくて “音が出ない”

②特定の鍵盤を押し込んでも“音が出ない” (鍵盤は正常に動く)

③どの鍵盤を触っても、楽器から全く “音が出ない”(電源は入る)

④楽器自体の電源が入らず “音が出ない”

このように、様々な状況が考えられますし、それぞれ原因となる箇所も違います。

状況が分からない場合には、その伝わり方次第で、全く違うとらえ方になってしまう可能性も…。

ですので、症状をご指摘いただいた際には、 “どのような状況で発生しているのか”も含めて、まずは詳しくお話を伺い確認を行います。

(これは、とても大切です)

ただ、それでも相手に何かを正確に伝えることには難しさが伴います。

伝言ゲームのように人から人へと伝わる間に、文言やニュアンスが少しずつ変わってしまうこともあります。

症状を正確に把握することは、原因を推測するうえでも重要ですし、「どのパーツが必要なのか?」というところにも関わってきます。

そう考えると、やはり確認作業というものはとても大切。

できるだけ正確に状況を把握しておくことが、スムーズな修理の実施には欠かせません。

KY
KY

この辺りには過去の経験も大いに役立ちますし、技術者の腕と勘の見せどころ!と言えるかもしれません。

原因の推測と確認


では、今回の『複数の鳴らない鍵盤・場所は分散』という場合に、疑われる不良箇所はどこでしょうか?

これまでにも、接点ゴムと基板接点が接触することで音が鳴る仕組みについては、何度かお話してきました。

では、その接触から先はどうなるのか?

基板の表面や内部には、部品間を繋ぐための配線(銅箔などを使用)があります。

これをパターンと呼びます。

それぞれの鍵盤から始まった電気信号は、基板上のパターンを通り、途中から一定の規則に従ってまとめられながらICなどへ送られていきます。

そして、それらの信号をマイコンなどが読み取り、制御することで、最終的に「音が鳴る」という結果につながります。

では今回のように、複数かつ離れた場所の鍵盤で音が鳴らない場合はどうでしょうか?

接点ゴムや基板接点そのものに、それぞれ個別の不具合が発生しているというよりも…。

・基板上のパターンが、腐食や破損などによって途中で切れている

・ICやその周辺回路に不具合があり、信号を制御できなくなっている

このあたりが原因となっている可能性の方が高い、という推測となります。

もちろん他の理由も考えられますが、この推測をもとに基板取り外して確認するため、さらに分解を進めます。

基板まで到達したあと、ホコリを除去し部品を取り外して、接点やパターンの状態を確認します。

外見上、明確な腐食や破損が見受けられない場合には、新品基板に交換して症状の変化を確認します。

接点基板に搭載されたマイコン

そしてこちらがマイコンです。

マイコンの不良についても外見上で判断することは難しいものです。

そのため、基板を交換したうえで正常に動作するかを確認していきます。

パーツ交換・組立


基板と共に、接点ゴムも念のために新しいパーツを取り付け、組み立てて行きます。

外した束線も。元に戻して行きます。

この時、コネクタの種類によっては束線挿し込み方向が分かりにくいものもあります。

また、基板をネジ止めしてからでは挿し込みにくいコネクタなどもあるため、方向だけでなく取り付ける順番にも気を付けます。

通常のコネクタは裏表反対には入らない形状になっていますが、薄型のコネクタや束線の場合は反対向きでも入ってしまうものもあります。

コネクタの形状は様々なものがあり、この辺りにも過去の経験が生きてきます。

鍵盤フレームの隙間を通って基板に挿し込まれる束線

組み立てが概ね完了したところで、電源を入れて正常に音が鳴るかをチェックします。

ここまで作業すると、あとは『音が鳴りますように!』と技術者も祈りながら電源を入れるのみ。

楽器が立ち上がるまで10秒~20秒ほどはあるでしょうか。

鍵盤を触る瞬間は、やはり少し緊張するといいますか、ドキドキしますね。

そして、鳴らなかった7鍵を確認すると…。

無事に音が鳴りました!

さらに全ての鍵盤をチェックし、その他の部分についても正常に動作・反応するかを確認。

問題なく動作していることを確認し、無事に修理完了です。

エレクトーンに使用するUSBメモリのお話


このブログを書きながら、ふと思っていました。

最初の電音修理ブログは、『エレクトーンのペダル鍵盤で音が鳴りにくい』ことについて。

その次は、『電子ピアノで一つだけ音が鳴らない鍵盤がある』

そして今回は、『エレクトーンの下鍵盤で音がなならいところがある』

電子楽器修理については、“音が鳴らない” というお話しの紹介しか出来ていないなと…。

それだけ音の鳴り方に関する症状・故障が多いということでもあります。

しかし実際には、その他のご相談も、もちろんいただきます。

エレクトーンでのご相談ですと、

・液晶が反応しない

・エクスプレッションペダルの反応がおかしい

・USBメモリのデータが正常に読み込まれていない?

 などなど

その中で、『USBメモリ』について少しお話しします。

現在のエレクトーンでは、データ保存・読み込みについては、USBメモリが使用されています。

USBメモリにはさまざまな製品がありますが、エレクトーンでは『ヤマハ動作確認済 USBメモリ』の使用を推奨しています。

動作確認済USBとは、エレクトーンで正常に動作することが実際に確認されているUSBメモリのことです。

ではなぜ、動作確認済USBが推奨されているのでしょうか。

USBメモリは、メーカーや品番によって内部のメモリや制御方式、読み書きの速度などが異なります。

そのため、パソコンでは普通に使えるUSBメモリでも、エレクトーンとの組み合わせによっては、認識しない、保存に時間がかかる、データを正しく読み込めないといった症状が起こることがあります。

特にエレクトーンでは、レジストレーションや演奏データなど大切なデータをUSBメモリに保存します。

途中で正常に書き込みができなければ、データに不具合が生じる可能性もあります。

その様なトラブルをできるだけ避けるために、実際にエレクトーンとの組み合わせで動作確認がおこなわれたものが、「ヤマハ動作確認済USBメモリ」として案内されています。

実際に私たちも、『勝手にレジストが変わる』『読み込めるときと、読み込めないときがある』などのご相談をいただくことがあります。

その際、ご使用のUSBメモリが動作確認済のものではなく、動作確認済USBメモリへデータを移していただいたところ、その後症状が改善した、というケースも多く経験しています。

もちろん、USBメモリだけが原因とは限りません。

それでも、データに関するトラブルをできるだけ避け、安心してお使いいただくためにも、動作確認済USBメモリの使用をおすすめしています。

ご注意いただきたい点

・動作確認済USBメモリについては、エレクトーンで動作することを確認した結果であり、データを保証するものではありません。 

・USBフラッシュメモリーの仕様は各メーカーの都合により変更される場合があり、同じ品番でも製造時期や製造場所によって正常に動作しない場合があります。 仕様の詳細などにつきましては、各メーカーへお問い合わせください。

※ヤマハ ホームページより引用

電子楽器も奥が深い


またお話が長くなってしまいましたが、電子楽器もなかなか奥が深い……ということかなと思います。

楽器は、様々な仕組みの上に成り立っています。
一見ささやかに思えることでも、実際に使用するうえでは影響することがある。
それはアコースティック楽器でも電子楽器でも変わらないのだなあと、改めて感じています。

今回のお話はここまでです。

楽器に関して気になることなどございましたら、お気軽に三木楽器ピアノアトリエまでご相談ください。

それでは、最後までお読みくださり、ありがとうございました!